介護食は、個人の噛む力や飲み込む力に応じるために種類が豊富で、中でもムース食は舌でつぶせる柔らかさが特徴です。ムース食は見た目がおいしそうなので、高齢者が食事を楽しめることや、食欲を損なわないため栄養状態を維持しやすいなどのメリットもあります。
今回は、九州を中心に750以上の施設に給食を配送する「ほっとキッチン」が、ムース食の特徴や他の介護食との違いについて解説します。
介護食とは?どんな種類がある?
介護食とは、噛む力・飲み込む力が弱い人が食べやすいよう工夫された食事を指します。特に、高齢者はこれらの力が弱くなる傾向にあり、うまく飲み込めずに食材が気管に入った場合など、誤嚥性肺炎を起こす可能性もあるので注意が必要です。
介護食の調理方法は、食べる人の噛む力・飲み込む力に応じて以下に分類されます。
きざみ食
きざみ食とは、通常食と同じメニューを細かく刻んで食べやすくしたものです。飲み込む力はあるものの、噛む力が弱い人に適しています。食材を刻む大きさは個人に合わせ、みじん切りから2センチ程度まで、さまざまです。
ただし、メニューによっては小さく刻むことにより口の中でまとまりにくくなる場合もあり、誤嚥を招く可能性もあるので注意しましょう。きざみ食は飲むこむ力が弱い人や唾液が少ない人には向いていません。
ゼリー食
ゼリー食とは、通常食をペースト状にし、寒天やゼラチン、でんぷんなどで柔らかく固めたものです。ぷるぷるとしたゼリーのような食感で喉滑りがよく、しっかり噛まなくても安全に飲み込めるという特徴があります。
ゼリー食が適しているのは、噛む力・飲み込む力がともに弱い人や、嚥下機能に重度の障害がある人などです。食べる人の状態に合わせて、固さや舌触り、水分量などを調整する必要があります。
ミキサー食
ミキサー食とは、通常食にスープや出汁などを加え、ミキサーにかけてポタージュ状にしたものです。噛む力・飲み込む力ともにほとんどない人に適しています。ただし、液状のため、喉に流し込む際にむせやすくなる点には気をつけましょう。とろみ材を加えて、適度な粘度に仕上げるなども必要です。
また、水分で満腹感を感じやすく、食事量が減ることで必要な栄養を十分に取れないことや、見た目があまりおいしそうではないなどのデメリットもあります。栄養状態や盛り付けにも配慮し、おいしく食べてもらえるような工夫が必要です。
ムース食とは?特徴や食べさせ方は?
介護食にはムース食と呼ばれるものもあります。ここでは、ムース食の特徴や対象者、食べさせ方の注意点などについて見ていきましょう。
ムース食の特徴
ムース食とは、通常食をすりつぶし、型やとろみ材などを使用して成形した食事を指します。比較的自由に成形できるため、きざみ食やミキサー食などと比べ、見た目がおいしそうな点がメリットです。食欲を損なわず、栄養状態を維持するのにも役立ちます。
見た目は通常食に近い状態で提供でき、季節感を意識したメニューにするなど食事に変化を出しやすいでしょう。また、箸を使って食べられることや、スムーズに飲み込みやすいため誤嚥を防げる特徴もあります。ただし、調理に手間がかかる点デメリットもあります。
ムース食の対象者
ムース食は、噛む力や食べ物を口の中でまとめる力、飲み込む力などが弱い人に適しています。固いものは食べるのが困難ながら、柔らかいものであれば舌や歯茎でつぶしながら食べられるといった人向けです。
ムース食は、噛む力が弱まってきたと感じたときに最初に試す介護食としておすすめです。初めからペースト状の食事からスタートすると、噛む力はますます弱くなっていきます。噛む力はある程度訓練で回復する可能性もあるため、まずは通常食と並行してムース食をスタートするとよいでしょう。
ムース食の食べさせ方
ムース食を食べさせるときには、汁物、おかず、ご飯というように、食べる人が飽きないよう順番に口に運ぶことを意識しましょう。一度に飲み込める分だけ口に入れるようにします。口の中のものがなくなってから、次を食べさせるようにしてください。
自分で食べられる人の場合はなるべく手を出さず、何かあった際にすぐ対応できるよう近くで待機しておきましょう。
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